「ー!畑行かへん?」
「いくっ!柔兄、まってて、おかーさんにゆうてくる!」
の家の玄関から見える縁側でゴロゴロしていたを見つけて柔造が声をかけると、
はピョンと起き上がり家の奥へパタパタ走っていった。
しばらくすると麦わら帽子を両手で持って「いまいく!」と玄関の方に駆けていき、
ガラガラと扉が開いてサンダルをひっかけたが慌てて出てきた。
「ほな、行こか」
そう歩き出すと歩幅の小さなは少し出遅れる。
柔造においていかれるとでも思っているのか必死に走るが柔造はかわいらしくてたまらなかったけど、
あんまり意地悪すると嫌われそうで嫌だと思い、手を繋いでゆっくり歩く。
5つになったばかりのは剣術の修行以外では
あまり走り回ったりしない子で、柔造や蝮に比べるとおとなしい。
でもそれは家や回りには大人しか居ないからで、
二人の前ではお転婆になったりしてその度にひやひやするのだ。
「お父!手伝いに来たでー!」
「こんにちは!八百造おじさん!」
畑に着いて奥の方でトマトが折れないよう試行錯誤している八百造に声をかけると、八百造はくるりと振り返った。
「柔造、ちゃん、ありがとうなぁ。ほんならそっちの畝のジャガイモに水やってくれんか?」
「はーい!」
「、水くみにいくで!」
柔造はの手をとってジョウロの置いているところまで向かった。
今日は蝮は妹達の相手をしているのか居ない。
いつもより上機嫌で歩く柔造を見上げてが「柔兄、ええことあったん?」と首を傾げるから
「どうやろなぁ…せや、これ終わったら一緒に裏山で遊ばん?」とこの機会を無駄にはしまいと誘うとは笑顔で頷いた。
ほら、ええことあった。