金造はいつも3つばかり年上ののことをあまり良く思っていなかった。
年上のくせに、柔兄に自分より甘やかされているところとか、たまに自分と同じくらいドジをしでかすのに自分とは違って頭がいいところとか、そしてなによりも自分の尊敬している柔兄に喧嘩ばかり売ってくる宝条の娘と仲が良かったからだ。
そんな二人の微妙な関係には皆も気付いていたけれども、周りから見たらそれは微笑ましいで終わっていた。
「廉ちゃーん。おいでー?」
そんな中、まだ3つの廉造と、もうすぐ8つになる金造、そしてもうすぐ11のの三人で、志摩家で留守番の日があった。
は自分が絡むと金造の機嫌が悪くなることには気付いていたから朝からずっと廉造の相手をしていて、金造は午前中は外に行ったりして時間を潰したりしたけれども、昼からは雨が降ってきたし柔造も居ないし他の兄弟も居ないから暇でしょうがなくなっていた。
「あれなにー?」
「んー?ボタンだよ」
暇すぎるからさっきから居間でひたすらこれはなに、と質問しまくる廉造とそれに飽きずに付き合っているを眺めていたけれども、それにももう飽きてつまらない。
金造はつまらないことは嫌いだ。
が気にくわないなんてこと以上に遥かに。
「…なぁ」
「これはなにー?」
「これは座布団」
「無視すんなや!」
タイミングが悪く無視された形になって、怒ってどなる金造を見てはびっくりする。
「ごめん、そんなつもりはなかってん。なぁに?金造?」
「……」
でも、実際用事を聞かれても、とくにはなくて、ただ暇だっただけで黙りこむ金造。
そんな金造をは不思議そうに見ていたけれども何かを察してにっこり笑うと廉造に話しかけた。
「廉ちゃん、金造お兄ちゃんも物知りさんやからなんでも知ってるで!聞いてみ?」
廉造はそれに首をかしげた。
「でも、じゅうにいがきんにいはアホやってゆうてたで」
「なんやとゴルァっ!!」
生意気な末の弟に怒鳴るけれどもそれも「金造、やめって!廉ちゃんはまだ小さいねんから」と諭されて余計に腹が立つけれども、さっきまでの暇と比べたらむしろそれも心地いいくらいで、
結局三人で廉造の積み木をしたり、金造と廉造とで喧嘩してそれをが止めたりしていたらいつの間にかおやつの時間だった。
廉造は遊び疲れてすっかり眠ってしまっていたから、は廉造をそっと寝室へ連れていき布団に寝かした。
金造はその間に廉造のぶんのお菓子まで(あの赤ちゃん用の白いせんべいだ。)食べてしまって、そのあとは珍しくじっと、窓から外を眺めていた。
お昼から降っていた雨はまだ止みそうにない。
「雨、やまんね。」
「…おん。」
いつの間にか金造のとなりにはが帰ってきていて、二人で並んで雨がポツポツと打ち付けるガラスを眺めた。
「暇やね。」
「おん。」
「・・・なんかして遊ぶ?」
「なんかってなんやねん。」
はしばらくうんうん唸ると、ぽん、と手を叩いて言った。
「お歌歌わへん?学校でかごめかごめの歌のハモり方教えてもらってん」
「、また外したやろ!へたくそ!」
「金造が上手すぎるだけやし!わたしは普通や!」
「が下手すぎるんや!なんで最初から音違うねん!」
「つられるの!金造の声が大きいから・・・普通にハモらんかったらうまいもん!」
「おーおーじゃぁやってみるかぁ?」
夜になって帰ってきた志摩家一行は、居間でなかよく眠ると金造と、寂しかったのかいつの間にやら一緒に寝ている廉造の三人に呆れて笑うしかなかったのだった。
なんだかんだいって、仲の良いこと。