「はじめまして。です。よろしくお願いします。」
アカデミーに編入した日。
とても緊張したけれども、やっと家でのキツい修行から抜け出せる、と嬉しくもあったのを覚えている。
でも、実際はそう簡単ではなくて、アカデミーから帰ったら相変わらずの修行だし、記憶の限りほとんど初めて話す同い年の同級生達との関係が上手く築けなかった。
もうすっかりグループの出来上がってる女の子の輪に入るには勇気が足りず、だからといってイタズラしたりはしゃぎまわっている男の子と仲良くしようとも特段思わなかった。
ろくに友達も作れないまま、楽しそうに話す皆の隙間を縫って家に帰って修行。
こんなことならアカデミーに通わない方が良かったかもしれない。
友達もできない学校に行くくらいなら家でばあちゃんに怒られてた方がマシかも、と三日はウジウジしていて四日目から開き直った。
友達ができないのは仕方ない。
ならばせめて成績だけでもトップをとってばあちゃんの機嫌でも良くしておこう、と。
三日間受けた授業はわたしにとってはとても簡単で眠いくらいだった。
そして今日は木の葉の里の歴史と地理学の小テストと手裏剣の実技がある。
ちょうどいいとはこのことだ。
一時間目
小テスト
テストは終わったら隣同士交換して丸つけをする。
一問わからないのがあったけど、他は全部できたハズ、とわたしは自信満々で隣の子のテスト(秋道君のもので途中ポテチをつまみ食いしていたからか若干脂ぎっていた)の丸つけを終えて23点と点数を書いた。
わたしの落とした問題は6点かー、返された答案用紙の点数は予想通りの94点。
まぁ、重箱の隅をつつくような問題が数問出たからこれでも充分トップを狙えるはず、とテスト用紙を先生に提出しようとしたとき前で女の子達が騒いでいた。
「わー!サクラ、また100点!?」
「一回読んだら自然と頭に入るのよ」
「やっぱりサクラは頭いいねー」
「なによーデコリンのくせにぃ!」
「うるさいわよいのブタ!悔しかったらこれくらい点数とりなさいよー!」
……マジで、
正直今回のテスト、勉強してきても100点なんて教科書丸覚えでもしなきゃ解けないくらいだと思ってたんだけど…
まぁ、こんなこともあるよね、次だ、次!!
五時間目の手裏剣術は実技テスト。
わたしは小テストを挽回しようと全部を散らばった的の中心に当ててどうだ、と先生を見た。
でも、先生はわたしを見ていなかった。
先生だけでなく、だれも。
丁度同じタイミングで試験を受けていたうちはサスケに、みんなくぎ付けだったのだ。
「キャー!サスケくんかっこいぃー!」
「全部真ん中に当たってるわ〜!」
先生も「さすがだな」と手放しで誉めた。
せんせー、わたしは?
わたしはなんだかつまらなくなって、わたしだって全部真ん中に当てたのに、とわたしの方の的を見ると、そこには目にいたい、忍者のくせに忍んでない感じの少年。
「なんだってばよ!いーっつもサスケばっかり!」
彼はそう言ってわたしの投げた手裏剣を的から全部引き抜いた。
「イルカ先生!みてろってばよ!!」
あー、まだ、誰にも見てもらえてなかったのに・・・
でも抗議する勇気はなくてそのままため息をついてもとの位置に戻った。
ほんとに、アカデミー嫌だなぁ…
明日からサボって1人で修行しようか、しゃがみこんでため息ついたとき、
「あ、あの、す、すごいね!さんっ」
「え?」
突然声をかけられて驚いて振り返るとそこにはおかっぱの可愛らしい女の子。
「あ、急にごめんなさい。わたし、さんの手裏剣術見てて、どうやったらあんなに上手く行くのかなって…気になって…型とかはうちは君より上手だったし…」
「そ、そうかなっ」
「そうだよ!今日のテストも、わたし後ろの席だから見えちゃったんだけど、すっごく点数も良かったから…」
女の子は緊張しているのか吃りながらも必死にわたしのことを誉めてくれて、すごく照れる。
ばあちゃんはわたしが何かできるようになっても褒めずにすぐに次やることを言うだけだったから手放しで褒められたのは記憶のある中では初めてだ。
てか、よく考えたら誰かから話しかけられるのも編入初日以降はじめてかもとか。
まだいろいろ誉めてくれる彼女が嬉しいけど恥ずかしくて「も、もういいよっ」と必死に彼女を止めた。
「…あ、ごめんなさい、わたし勝手に…いろいろ…迷惑だったよね…」
「ううん、ぜんぜんそんなことない!嬉しかった!…その、あんまり誉められたことなかったから…照れ臭くて」
すると彼女は、大きな白い瞳を丸くした。
「え?…これだけすごいのに…?」
わたしはあはは、と照れ笑いする。
なんだか気は弱そうだけど純粋な彼女のことが気になって、わたしは編入初日から二度目の自己紹介をした。
「あの…わたし、。あの…」
「!…日向ヒナタっていいます!」
「ヒナタ…あの、その、良かったら…友達になって…ほしい、な」
ヒナタは顔を真っ赤にして何度も頷いてくれた。
こうしてわたしは人生はじめての友達ができたのだった。