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卒業試験は分身の術だった。
難なくクリアしたわたしは卒業を喜ぶ家族達の間をすり抜けて演習場へ向かう。 ばあちゃんのスパルタ修行に対する防衛本能とでもいうのだろうか、わたしはいつのまにやら修行が趣味と化していた。 いつも通り忍術の修行を終えると、手裏剣、剣術、とこなしていく。 修行は辛いししんどいけれど、その中で成長している部分を見つけ出すのが楽しい…と、思うようにしている。
それに…

!また腕が上がりましたね!!」

「リーさん!」

高めあえる仲間もいる。

「リーさんは任務帰りですか?」

「ええ!今日はCランク任務で里の外で少し。ガイ先生はそのあと上忍の任務に行かれました。」

リーさんはわたしより一年早くアカデミーを卒業した先輩だ。
年もひとつ上。
そして体術がとんでもなく凄い努力の人。
ガイ先生はそのリーさんの下忍のスリーマンセルの上忍の先生でとても熱く、濃く、修行も徹底的にやる人だ。 リーさんとガイ先生とは去年の今頃からよくこの演習場で一緒になり修行仲間となった。

「そういえば、今日はアカデミーの卒業試験の日でしたよね?」

リーさんがキラキラした目でこちらを見てくるからわたしも笑顔で頷いた。

「はい!お陰さまで合格です!」

おめでとうございます!と全力で喜んでくれるリーさんに今更ながらわたしも嬉しくなった。 しかしそのあとリーさんは「あ」と何かを言いかけたが彼は自分で自分の口を押さえてその言葉を飲み込んだ。

「え、なんですか?」

「な、なんでもないです!」

「気になるじゃないですか!」

言いかけてやめられたこととかめっちゃ気になる。 でもリーさんは言う気は無いようで 「すみません!とにかく、これからも気を抜かずに頑張って下さい!」 と先輩らしいことを言うと走り去ってしまった。
…まだ修行もしてないのに。

とにかく、明日はわたしもリーさんのように下忍になるのだ。 どんなチームメイトでどんな先生につくことになるのだろうか。 ガイ先生みたいに修行を徹底的に見てくれる人がいいなぁとか思いながらわたしは今日のメニューを終えて帰路についた。




「ただいま」

家に帰るといつもあるはずの気配が無かった。
わたしは咄嗟に警戒したが、それは少し遅かったようで、背後から飛んできた手裏剣を避け損ねて左腕にピッと血の線が走った。

「甘い!まさかそれで下忍になったとか言い出すんじゃないじゃろうね!」

背後からの怒鳴り声に思わず竦み上がった。

「…ばあちゃん…ただいま…」

「おかえり。で?」

「受かったよ、一応。」

成績表を鞄から出して渡しながら報告するとばあちゃんは成績表を見て 「またお前は二番か、しかも一番の教科は無しで」とため息をつく。
仕方ないじゃん。ばあちゃんの修行のせいで授業には遅刻するし、睡眠時間足りなくて授業中寝ちゃうし、 という言い訳はぐっと飲み込んで「はいはいごめんごめん」と適当に謝って食卓についた。

「いただきます」

ばあちゃんの説教は止まらない。

「またうちはに一番を持っていかれたんじゃろう?…くのいちクラスの授業ですら…五番!?嘆かわしいわ」

「…生け花とか苦手だし。」

「筆記試験だけの歴史も二番!?」

「あー頭良い子がいるんだよね」

「体術も、忍術もうちはに負けて二番!?」

「…実技テストでは勝ったよ。でも出席日数がさ…」

「言い訳無用!とにかく、夕食が終わったらすぐ修行じゃ!」

「はいはい」

こーんな滅びかけの廃れた一族なのに、今更やる気出しても日向さんやうちはさんどころか、山中さんや奈良さん、秋道さんとかのとこにすら届くわけない…なんてわたしは思ってしまったわけだけど、ご飯を掻き込んで修行場へ向かうわけで、
わたしってマジ素直で優秀じゃね?