朝御飯抜きってけっこう後からくる…
今までばあちゃんにより三食しっかり採っていたからか、はたけ先生を待っている間にわたしのお腹はきゅるる、と情けない音で空腹を訴えていた。
普段なら人に聞かれたらだいぶん恥ずかしいけど、今日は他の三人も…特にうずまき君は豪快に鳴っていたからもう気にならなくなった。
そしてはたけ先生は来ない。
どうやら昨日遅れてきたのもたまたまではないのだろう、これは習慣に違いないとか思いつつ時間は過ぎていく。
結局はたけ先生は一時間遅れでやってきた。
とにかく、先生は持ってきたタイマーを正午にセットする。
「ここに三つ鈴がある。お前たちの任務はこの三つを正午までに俺から奪うことだ。」
チリンと鈴が揺れた。
はたけ先生は鈴を自分の腰にくくりつけた。
「鈴を正午までに手に入れられなかったものは昼飯抜きだ!お前らをあの丸太に括りつけてその前で俺が弁当を食う!」
そのための朝食抜きか!とみんなで唸った。
「奪う鈴は一つでいいが鈴は三つしかない。お前らのうち一人はアカデミーに逆戻りだ。」
緊張感が四人のあいだで生まれた。
この中の一人は確実にアカデミー行きだ。
「手裏剣を使ってもいい。俺を殺す気で来ないと無理だろうしな!」
昨日忍具一式持ってこいと言ったのはこのことか。
春野さんややうずまき君がそれじゃぁ先生が危ないと言ったが、挑発されて逆上したうずまきくんはあっさり返り討ちにあった。
流石上忍。
はたけ先生は一瞬でうずまき君の背後に回り込みうずまき君のクナイを持った手を捕らえ逆にその刃を彼の首元へと向けていた。
「焦るなよ。まだはじめとは言ってない。やっと俺のことがわかったか?」
はたけ先生はわたし達を見回す。
「わかったようだな・・・ようやくお前たちのことが少しは好きになれそうだ。」
演習がついに始まった。
「はじめ!」
はたけ先生の合図でみんな一斉に物陰へと身を潜めたけれども、うずまき君は真っ正面から先生に立ち向かいあっさりやられた。
そしてうずまき君となにやら話していたはたけ先生を狙ったうちは君が逆に先生の罠にかかり、潜んでいたうちは君の位置を確認した先生がうちは君を追ったので、
わたしはあわててその場を離れた。
すぐに春野さんの悲鳴とか聞こえてきたから、何らかの接触があったのだろう。
あーもう、うずまき君といい、うちは君といい、みんな先走りすぎだ。
でもこれはいくらなんでも力量差がありすぎる。
なのに鈴を取れなきゃ下忍になれないなんて…そんな変なことあるのかな??
だって、こう言ったら怒られるけど、あまり強そうで無い人だって今まで下忍になれてきているのだ。
試験ならば平等のハズ。
何か裏があるハズだ。
木の窪みに身を潜めて考える。
鈴 取る 昼御飯
演習 五人だけの任務 試験
下忍 なれる人数 9〜10名
卒業試験 分身の術 合格
昨日 演習場 リーさん
リーさん ガイ先生 スリーマンセル
…そうだ!
わたしはあることに気づいてすぐに気配を辿った。
少し離れたところの戦闘の気配を見つけてそっと近づく。
うちは君がちょうどはたけ先生と交戦していた。
うちは君は予めトラップも用意していたようで、アカデミーで習ったお手本の戦術を更に越えて個性の光る動きで戦う。
アカデミーで組手をしたときよりもうちは君の動きは格段に上がっていたが、
リーさんやガイ先生とたまに修行しているわたしからいうとまだまだだ、なんてね。
体術は、センスではうちは君がわたしより上だけど、技術ではわたしが勝ってるかな…
まぁ、技術なんて修行次第ですぐに追い抜かれてしまうだろうけど。
本当にうちは君はズルい。
努力しなくても持ち前のセンスや才能でじゅうぶんに強いのに、強くなることに貪欲で努力している。
わたしにはセンスも才能もそんなにないから努力するしかない。
でもわたしが小さい頃からやってきた厳しい修行の成果もうちは君が本気を出せばすぐに追い抜かれてしまうんだ。
悔しいな…
そうこうしているうちに、決着が付きそうになった。
うちは君は印を組み火遁・豪火球の術を繰り出したが、はたけ先生がそれよりも早く土遁の術を完成させていた。
ー決着が付いてからじゃ遅いかな…
わたしは木の陰から飛び出し、うちは君の足を掴もうとした先生の手から彼を救うため、うちは君にタックルをかました。
助けるため仕方なく、です、もちろん。
「!?…なにをっ!!」
あまりの突然のことにうちは君は受け身も取れず地面に転がったけど、先生はもとからわたしの気配には気付いていたようで、
地中から出てくると「やっと出てきたか」と言った。
ここからが重要だ。
「うちは君!手を組みましょう!」
わたしは転がっているうちは君を先生から庇うように立って構えながら言った。
うちは君は驚いたようだが、わたしの言葉に同意はしてくれなかった。
「断る」
「…あなた一人じゃ鈴は奪えなかった」
「あと少しだった。それに、お前がいても足手まといだ。」
その言葉にわたしは当初の目的も忘れてカチンときてしまった。
確かに、わたしは成績ではうちは君には負けたけど、修行量では負けない…!!
「そうですか。じゃぁうちは君は勝手に一人でやっていて下さい。わたしはこの試験、他の二人と合格しますよ。」
本当は七班で一番実力的にも勝ってるうちは君と協力する予定だったけど、もういい。
あとの二人は煩いけど、事情を説明すれば…
「どういうことだ?」
うちは君がわたしの言葉に疑問を口にしたそのとき、今までこちらの様子を伺っていたはたけ先生がピクリと反応してわたしに手裏剣を投げてきた。
動いたらうちは君に当たるので仕方なくクナイで弾くが、背後でうちは君の驚いたような声が聞こえて振りかえるとうちは君は地中に顔から下が埋まっていた。
「しまった…!」
影分身か!
わたしは咄嗟にその場を離れるとわたしが居た場所にはたけ先生が立っていた。
間一髪。
「、それはどういう意味かな」
はたけ先生が笑顔で、でも探る目でわたしを見ながら尋ねるからわたしは「そのままの意味です」と返した。
「この演習、いえ、試験の答え…」
わたしがこの“五人だけで行う任務”の意味を言おうとするとはたけ先生に攻撃で遮られた。