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一族でアカデミーは飛び級で卒業。
成績優秀だが、授業態度はあまり宜しくなかったようだ。
正直俺はあまり彼女に関心は無かった。
ただでさえうちは一族の生き残りのサスケにミナト先生の息子で九尾を宿したナルトがいる。
これだけで充分手一杯だった。
しかし、演習をやってみるとは下忍とは思えぬような動きを見せたのだ。
この演習の答えを素早く導きだす洞察力の高さ、水上歩行の業、それに中忍レベル、いや、下手したらそれを上回るかもしれない水遁の術の数々。
サスケもそうだが、もこの年齢で性質変化を使いこなしている。
サスケは天才だ。
サスケの術は、こういった表現もおかしいかもしれないが、荒いがどこか華のある術だ。
一方は、才能は無い。
の術は基本に忠実に、何度も何度も修行したのだなとわかるような術。
水上歩行の業ができるのも、術を見てもの方がチャクラコントロールは圧倒的に上手い。
油断していたのもあったが、鈴の紐を切られたときには本当に焦った。
思わず本気で蹴飛ばしてしまうくらいには。
でも俺は彼女は確かに学年一位のサスケを上回っているハズなのに、何故かはサスケよりも劣っているように感じた。
そしてそれ以上にから感じたのは

劣等感

彼女はサスケにナルトよりもライバル心を抱いているようだが、どこかでサスケには勝てないと思い込んでいる節があるのかもしれない。
自信があるようで、自信がない。
でも自分の力を示したく、認めてほしくて仲間も利用する。
なかなか厄介な子だ。

俺はを連れてスタート地点に戻り、ルールを破って弁当を食べようとしていたナルトを捕らえた影分身をもとに戻した。



まだ、はたけ先生に蹴られたお腹が痛む。
わたしは痛みに顔をしかめながらも少し嬉しく感じた。
いや、べつにどMとかじゃなくて、
だってわたしは思わず手加減を忘れるくらい先生を追い詰めたのだ。
スタート地点に戻りメンバーと再会したが、わたし以外はみんな怪我は負わされていなかった。
はたけ先生の気遣いだ。
でもわたしにはその余裕が無かったってことなんだ。

わたしが春野さんの隣に並んだところではたけ先生は口調だけは柔らかく言う。

「腹の虫がなってるねぇ、君たちぃ」

朝から何も食べていないからみんな揃って盛大にお腹がなっていた。

「ところで、この演習についてだが、おまえらはみんな、アカデミーに戻る必要もないな。」

その言葉に一番に反応したうずまき君は嬉しそうに
「じゃあさ、じゃあさ、ってことは四人ともっ…」
と笑顔になったけれども、はたけ先生はあの嘘臭い笑顔を豹変させた。

「あぁ。…おまえら全員、忍者をやめろ!!」

「え…?」

うずまき君と春野さんはさっきまでの喜びから一転して困惑の表情へと変わっていた。

「忍者やめろってどういうことだよ!?それは、たしかに!鈴は取れなかったけど、なんでやめろまでいわれなくちゃならねぇんだよ!?」

うずまき君がわめく。うちは君も不満がありありと顔からにじみ出ていた。
わたしは、はたけ先生がそこまで言う理由がわからないでいた。
不合格、というのも受け入れがたいけれども、わたしはちゃんと答えを出したのに…実行できなかったけれど。

「どいつもこいつも、忍者をやる資格も無いガキだってことだよ」

うちは君がその先生の言葉に逆上して殴りかかりに行ったけれどもあっさりと往なされて地面へ叩きつけられた。

「だからガキだってんだ」

「サスケ君を踏むなんてダメーーー!!」

春野さんがうちは君がそのまま踏みつけられるのを見ていつもの調子でわめくけれども、先生のドスの聞いた声での
「お前ら、忍者をナメてんのか?あぁ?」
という台詞に普段の勢いはしぼんでいった。

「なんのために班ごとのチームに分けて演習を行っていると思っている!?」

「え?どういうこと」

春野さんの疑問に先生は答えずに続ける。

「つまり、お前らはこの試験の答えをまるで理解していない。」

「こたえ?」

うずまき君がオウム返しで聞き返すのにはたけ先生は頷いた。

「そう、この試験の合否を判断する答えだ。…!言ってみろ!」

突然の指名にびびったけれども冷静を装って答える。

「…任務達成のためのチームプレー、です」

「…間違いだな。チームプレーではなく、チームワークだ。」

わたしははたけ先生の言葉の意味がわからなかったけれども少し黙っていろ、と目で言われたので
おとなしく先生の話を聞くことにした。
でも春野さんは納得が行かなかったようで、はたけ先生に詰め寄る。

「協力し合えってこと?」

「そのとーり!ま、今頃気づいても遅いけど、四人で来れば鈴も取れたかもな。」

「なんで鈴が三つしかないのに、チームワークなわけ?四人で必死に鈴取ったとして、
一人我慢しなきゃならないなんて、チームワークどころか、仲間割れよ!」

「あたりまえだ!これはわざと仲間割れするように仕組んだ試験だ。この状況下でもなお、自分の利害に関係なく
 チームワークを優先する者を選抜する、それが目的だ。それなのにお前らときたら…」

先生が春野さんをにらむ。

「サクラ!おまえは目の前に居るナルトじゃなく、どこにいるのかもわからないサスケのことばかり気にかけてた!」

春野さんは図星を突かれて押し黙る。

「ナルト!おまえはひとり独走するだけ。」

うずまき君も返す言葉もなく、唸った。

「サスケは他の三人を足手まといと決めつけ、個人プレイ」

はたけ先生に頭を踏まれてうちは君は悔しそうにする。

「そして、

はたけ先生がこちらを向いた。

はこの答えに気付いていた。だからサスケの援護に入った…ように俺に見せかけた、そうだろ?」

「…はい。」

確かにわたしはうちは君を利用してこの試験の合格を狙った。
でもここで忍者をやめろと言われている以上、それは失敗したことは明らかだった。

「洞察力、そして戦闘能力共に文句のつけようがなかった…が、おまえが一番駄目だな。」

わたしはその言葉に自分でもビックリするくらい反応した。
…一番、ダメ

「おまえは答えを知っていたのに、それを他の仲間には伝えず、しまいには仲間を利用して自分だけ合格を目指した…」


ドクドクと心臓が痛いくらい鳴る。

「チームプレーとチームワークは違う。チームワークを疎かにする奴は仲間を危機にも陥れる。」





わたしは、わたしはただ…








うちは君に、勝ちたかった。

これは、任務は勝ち負けじゃないけれど、馬鹿みたいな嫉妬からわざとうちは君には答えを教えず、
うずまき君や春野さんははじめから眼中にすら無かった。




そのあと先生は慰霊碑の前で任務でのチームワークの重要さについて話してくれたけれども、正直わたしはあまり頭に入らなかった。

気が付いたら話は一段落ついていて、先生はお弁当をチラリとみて言い放った。

「おまえら!最後にもう一度だけチャンスをやる。ただし、昼からは更に過酷な鈴取り合戦になる。挑戦する気のある奴だけ弁当を食え。
 …ただし!ナルトとには食わせるな!ナルトはルールを破って先に弁当を食おうとした罰、は、仲間を疎かにした罰だ。
 もし食わせたりしたら、そいつをその時点で失格にする。…ここでは俺がルールだ。…わかったな?」

そう言うとはたけ先生は瞬身の術でこの場からいなくなった。

うちは君と春野さんはお弁当を食べ始めた。
わたしはすこし離れたところで昼からの対策を考えることにした。
幸いわたしはうずまき君みたいに丸太に縛り付けられていないし、お腹が減ったということをそれで誤魔化すつもり。
しばらくすると、丸太に縛り付けられたままのうずまき君のお腹が盛大に鳴った。

「俺ってばべっつに、メシなんて食わなくてもへいき、へっちゃらだってばよ!」

うずまき君は強がるけれどもまたすぐに、ギュルルルルと情けなくお腹が鳴った。
うちは君はそんなうずまき君をみて「ほらよ」とお弁当を差し出したのだ。

「ちょ、ちょっとサスケ君!さっき先生が…」

春野さんが慌てて辺りを伺うけれども、うちは君は
「大丈夫だ。今はあいつの気配はない。…昼からは四人で鈴をとりに行く。
 …足手まといになられちゃ、こっちが困るからな」
とお弁当を差し出す手を引っ込めることはなかった。

「…、これ…」

春野さんも、うちは君をみて意を決したようにわたしにお弁当を差し出した。
でもわたしはお弁当を恵んでもらってることが凄く情けなく感じてしまい、受け取れなかった。

「い、いらない!わたしは、べつにお腹がすいていても足は引っ張らない…!!」

、でも…」

春野さんは困ったようにわたしを説得しようとしたけれどもそれを遮るようにまくし立てる。

「忍ならどんな状況でも戦えないと、意味がない…わたしならっ」

わたしがほんとうに情けなく駄々を捏ねていると、突然うちは君が何かを投げてきた。

…これは、湿布?

「忍なら食えるときに食って不足の事態にも対応できるようにしとけよ。ただでさえ怪我してんだろーが、このウスラトンカチ」

わたしは無意識にお腹を押さえていた手を離したが、もう手遅れで春野さんがわたしをくさむらに引っ張って行って湿布を貼ってくれた。
怪我は思ったよりも酷くてお腹は真っ赤に腫れていた。
ほんとにわたし、情けない。
でも、そのおかげで思い出した。わたしは人より不器用なんだ。
人の二倍やって、普通の人と同じくらい。
三つのときから、九年、まだ九年しか修行をしてない。
今までだって耐えてきたんだからまだまだ頑張れる。
努力しよう。今以上に。
わたしは思い上がっていた。わたしなんてまだまだだ。
先生の軽い蹴りでこんな怪我するくらいには。
耐えよう、耐えて堪え忍ぼう。
まだ、強くなるチャンスはたくさんある。

春野さんに連れられて皆のところに戻った。
うずまき君が心配そうにこっちをみる。うちは君はそっぽを向きながらもこちらを伺っていた。

「…ありがとう」

わたしがそう掠れた声で言うと三人は顔を見合わせて、笑った。
でもうちは君はすぐにまた不機嫌そうな顔になると、
「まだアイツの気配はない。早く食え」
とお弁当をわたしとうずまき君に差し出した。
そしてうずまき君が春野さんにご飯を食べさせてもらう直前、
「おまえらぁぁぁぁぁああ!」
凄まじい怒声と共にはたけ先生が現れたのだ。

「ルールに逆らうとは…覚悟はできてるだろうな?」

あまりの先生の剣幕に驚いたけれどもその途端、先生はニッコリと笑った。

「ゴーカク!」






「え?」

「どういうことだってばよ?」

状況が読めずに戸惑っているとはたけ先生は説明をしてくれた。

「お前らがはじめてだ。今までの奴は、素直に俺の言うことを聞くボンクラばかりだったからな。」

先生は空を見ながら、言った。

「忍者は裏の裏を読むべし。忍の世界でルールを守らない奴はクズ呼ばわりされる。…けどな、仲間を大切にしないやつはそれ以上のクズだ!!」


みんなが少し感動していると先生は仕切りなおすように、大きめの声で言った。


「これにて演習おわり!全員合格!第七班は明日から任務開始だ!解散!!」





チームワーク、





忍者は冷静に、割り切るところは割り切らなければならないって 今までずっと思っていたけれども…




こういう考え方もいいかもしれない。







後ろでうずまき君がなにやら騒いでいたけれども、わたしはなんだかわくわくして、 明日からの任務に備えて修行するため、走り出した。











ついに、忍者になりました!!