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幸い敵に会うこともなくはたけ先生を四人でなんとかタヅナさんの家まで運び込んだ。
目を覚ました先生は写輪眼を使いすぎた後遺症で一週間はまともに動けないと告げた。
春野さんは写輪眼って便利だけど考えものねと呆れたように言う。
なんにせよはたけ先生が毒とかにやられたわけでもなくよかった。
でも先生の顔は晴れない。

「どうしたんだってばよ?カカシ先生?」

うずまき君もそれに気づいて首を傾げた。

「追い忍ってのは、殺した者の死体はすぐにその場で始末するものなんだ。」

「それがなんなの?」

春野さんも首をかしげる。

「あの仮面の少年は再不斬をどうした?」

「知るわけないじゃない。だって持って帰っちゃったんだもの。」

春野さんが投げ捨てるように言った。
それにはたけ先生は頷く。

「そうだ。殺した証拠なら首だけ持って変えれば済むものなのに・・・それと問題はあの少年の再不斬を殺した武器。」

「ただの千本・・・まさかっ」

うちは君と同じタイミングでわたしも先生の言わんとすることに気がついた。

「まさかっ・・・」

「あぁ。おそらく再不斬は生きている。」

「「「えぇ!?」」」

うずまき君と春野さん、タヅナさんが絶叫した。

「そんな!?だって、カカシ先生アイツが死んだのちゃんと確認したじゃない!」

「確かに確認をした。だが、あれは恐らく仮死状態にしただけだ。」

はたけ先生に続いてまだ理解できていない三人に更にうちは君が説明する。

「千本は急所にでも当たらない限り殺傷能力はかなり低い武器で、そもそもツボ治療にも用いられているようなもの・・・」

はたけ先生は頷いた。

「彼ら追い忍は人体の構造は知り尽くしている。人を仮死状態にすることだっておそらく容易なはず。」

先生が一本、指を立てた。

「ひとつ、自分よりも重いはずの再不斬の死体をわざわざ持って帰った。」

そして、もう一本、

「ふたつ、殺傷能力の低い千本という武器を使用した。」

みんなごくり、とつばを飲んだ。

「この二点からあの少年の目的は再不斬を殺しに来たんじゃなく、助けに来た。」

タヅナさんが考えすぎじゃないか?と正直に思ったことを言ったけれども先生は首を振った。

「いいえ、寝首を欠かれるよりは出遅れるのを防ぐほうがいい。それに、それも忍の鉄則。」

みんな納得した。確かに先生の言うとおりだ。

「はたけ先生、出遅れる前の準備とはどういったものですか?」

先生はにやりと笑った。

「お前たちに修行をかす!!」

春野さんがそれに猛反発した。

「え、私達が修行したって、たかが知れているわよ!それに、相手は写輪眼のカカシ先生が苦戦したほどの忍者なのよ?」

でも先生はいたって真面目に答えた。

「サクラ、その苦戦している俺を助けたのは誰だった?」

みんなは今日やったばかりのあの戦いを思い出した。
水牢に捕まる先生、絶体絶命のピンチ・・・

「お前たちは急激に成長している。特にナルト、お前が一番伸びてるよ。」

「わかってるじゃんカカシ先生!これで面白くなってきたってばよ!」

ナルト君はあのときと同じ笑みで拳を突き出した。






はたけ先生は松葉杖をついてわたし達を森へと誘導した。
わたしは修行と聞いてわくわくする。なんの修行かな。まだやったことのないやつがいいな。たとえば、わたしの苦手な組手の面白い修行方法とか。
手裏剣は目をつむっても、どんな体勢でも的に当てる自信はあるし、術だってコントロールは毎日の修行でだいぶん良い。
でも体術は相手がばあちゃんばかりだったからクセがついているからなぁ。

「木登りだ。」

そんなわたしの幻想を打ち砕くはたけ先生の言葉。

「と言っても手は使わないけどな。」

なんて付け足して先生はわたしの方を向いた。

、できるか?」

おそらく演習のときや、再不斬の闘いのときに水上歩行の業をやったからだろう。できる、と確信しているんだろう。

「…はい」

先生の目がやれと言っていたから、わたしはゆっくりと木に向かいチャクラを足に留めて地面と平行になって木を登った。
これはかなーり昔…チャクラを練る修行をなんとかこなせた頃にばあちゃんにさせられたやつだ。たしか、4つか5つの頃。何度も木から落ちて気を失ったりしたなぁとしみじみと思う。
建物の三階くらいの高さまで登ってちょうど良い枝にコウモリみたいにぶらさがった。
下を見ると春野さんはさっき枝にぶら下がるときに落ちるとでも思ったのか目を背けて、うちは君は悔しそうに、うずまき君はキラキラした目でわたしを見ていた。

はたけ先生が「さすがだな」とわたしを褒めてくれたあと、三人にチャクラについての説明をする。
チャクラとは身体エネルギーと精神エネルギーを練り合わせて生み出すもの。
それを戦闘中にいかに効率よく使うかが勝敗に大きく関わる。更に足の裏はチャクラを集めにくいとされている場所。
修行にはもってこいなのだ。

先生は三人にクナイを渡して、登れたところに印をつけていけと指示を出すと三人は一斉に木に向かって走り出した。

一番いい線行ったのは春野さんで一番低い枝の上までなんと一回で登れていた。
わたしが初めてこれをやったときはあそこまで登るのに一ヶ月はかかったのに、とちょっとムッとするけれども年齢的な差もあるし、春野さんにはセンスもあるんだろう。まだ粗削りだけど。
わたしもうかうかしていられない。
うずまき君は細かいコントロールとかは苦手なようだけれども恐ろしいほどの潜在チャクラがあるし、うちは君だって今はチャクラコントロールをミスって吹っ飛ばされていたけれどもそれでも火遁を使いこなしているから、これでコントロールが上手くなればもっと強くなるだろう。

先生はとりあえず全員に今日のうちはこのまま修行を続けるように言って、はたけ先生に代わってわたしはその監督をすることになった。 そして春野さんには明日からタヅナさんの護衛に行けと指示を出していたからわたしは思わず木から飛び降りて先生に尋ねた。

「先生!わたしの修行は…」

も明日からタヅナさんの護衛だ!」

「…え?」

「いくら再不斬が一週間程回復にかかるとよんでも、実際はわからないしギャングレベルでも襲ってきたら一般人には酷だ。」

確かにはたけ先生が寝込んでほか二人が修行となるとわたしと春野さんしか動ける人は居ないし、結界が張れるわたしは護衛には適任だろう。
とはいえ、修行はしたかったからもやもやしているとはたけ先生が屈んでわたしの目線に合わせて聞いてきた。

「不満か?」

「…そんなことないです。」

わたしが先生と目が合わないように斜め下をみて渋々返事をすると、ふっと先生は笑って頭をくしゃくしゃと撫でてきた。

「おまえの結界は頼りにしてるんだ。たのんだぞ?」

結界は、ってなんだよとか思ったけれども褒められたら悪い気はしないわけで、ちょっとにやけた顔を隠すように頭を振って先生の手をどけた。

「わかりましたって!任せてください!」

はたけ先生はにっこり笑った。

「ま、なんかあれば結界を張って援護を呼べ。無理はするなよ」

わたしは無言で頷いた。

こうしてわたし達は修行組と養生組(先生)、護衛組に別れて一週間行動することになったのだった。






そしてその後三人はひたすら木を登り続けていた。
それを見てわたしは冷静に分析する。
うちは君はチャクラを足に溜めすぎ、うずまき君は逆に少ない。春野さんはコントロールは上手いけれど、チャクラの絶対量がない。
春野さんは疲れきって木に寄りかかって二人を見ていた。

「よくやるわね・・・」

春野さんがおそらくわたしに話しかけた。

「すごい根性あるよね」

「根性って・・・そういう問題じゃないわよ。もう無茶よ。明日、動けなくなっちゃうわ」

確かに、チャクラを使いすぎたら生命エネルギーがすっからかんになって危険だ。
でも・・・
そんなとき、集中力も切れてきた様子のうずまき君がやってきた。

「サクラちゃーん!!何の話してるんだってばよ?」

「アンタ達の体力についてよ。」

何を勘違いしたのかうずまき君が得意げに「俺ってばやっぱスッゴイ!?」なんて調子に乗るから、はたけ先生に言われていたとおり(彼らの集中力が切れてきたら発破かけろと言われていた。)うずまき君の鼻をおることにした。

「・・・でも。ヒナタ達の方が上手かったかな」

「え?」

うちは君も遠くの方で聞き耳を立てていた。
二人共競争心の強い人だからこんな感じでいいだろう。

「シノやキバは普段から森の移動をよくしてたから上手かったけど、ヒナタは手こずってたかな。でも紅先生にみっちり修行付けてもらってうまくなってた。」

でもわたしのヨミは外れていて、春野さんが訝しげにわたしを見ていた。

「・・・なんでそんなこと知ってるの?違う班なのに」

「それにそれに!なんで俺たちのことは苗字呼びなのにヒナタ達は名前を呼んでんだってばよ!?」

なんだか責められているような気がして慌てて答える。

「だって・・・友達だし・・・」

するとうずまき君がショックを受けたように叫んだ。

「俺達ってば友達じゃなかったのかよ!?」

「友達っていうか・・・班一緒になるまであんまり喋ったことなかったし・・・」

事実だ。
もともとアカデミーではうずまき君とは口をきいたことがなかった気がする。春野さんとは何度か・・・うちは君は演習中なら結構話してたかな。
キバやシノは卒業してからヒナタを通して仲良くなった。
わたし達七班は任務が終わったあとはそれぞれ別に修行したり休暇を楽しんだりしていたけれども、ヒナタ達八班はみんなで修行をしていることが多かった。
そこでヒナタに会いにいくと自然と紅先生をはじめキバやシノとも会うことが多くなり、今では別々に修行したあとに合流してそのままご飯を食べに行ったりしていたのだ。

「でも、もう仲間なんだし、いつまでも春野さんなんてよそよそしいじゃない。サクラでいいわよ。」

春野さんがそう言うけれども、改めてそう言われると反応に困る。

「・・・そんな急に言われても・・・」

うずまき君がまくし立てた。

「ってか俺達仲間なんだから違う班の奴らより仲良くしとくべきだってばよ!」

あんだけうちは君といがみ合っているお前が言うか、と思ったけれども黙って従うことにした。

「・・・じゃぁ、ナルト君、サクラさん、サスケ君とか。」

でも疲れていたからか春野さんとうずまき君のテンションはおかしかった。

「なんかそれじゃぁ呼び捨てよりよそよそしいじゃない!わたし達仲間なんだから、もっと親しくいきましょうよ!!」

「もっと親しく・・・?呼び捨てじゃなくて・・・?」

「そうだってばよ!あだ名とか!!」

そう言うとうずまき君は少し考える。

「・・・ナッちゃん、サっちゃん・・・あーでもサクラちゃんとサスケがかぶっちゃうってばよ!」

なんだかわたしも疲れてきたのか、その二人のテンションに乗ってつぶやいた。

「いっそのことサッスンとかにしたら・・・」

その瞬間少し離れたところで話を聞いていただけのサスケが言い放った。

「断る!!」

それで我に返る。
いけないいけない、修行中だった。

「とにかく!皆がこの修行を達成できたら考えます!休憩終わりです!!」

春野さんとうずまき君はしぶしぶ修行へと戻っていった。