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翌日、わたしと春野さんはタヅナさんについて護衛をはじめた。
護衛では波の国の実態を思い知らされた。
春野さんは暇なのでいろいろわたしに他愛ない話をしていてわたしははたけ先生に教えてもらった印をひたすら組む練習をしながらその話を聞いていた。
万が一のために無駄なチャクラは使えないから印を組んだり体術の基礎練習をしたりして時間を潰していたのだ。
そんなわたしを見て春野さんは「ストイックっていうかもうマニアよね。修行マニア」とか詰っていたけど事実だから苦笑いしておいた。
そしてその帰りに町に寄ったけれども、町にはストリートチルドレンや浮浪者が溢れて店にはまともに食糧も売っていない。タヅナさんの言っていたこの国が貧しいということは予想以上だった。

極めつけは食事中に聞いたタヅナさんの孫、イナリ君のお父さんの話。
国の英雄と言われていた彼は、ガトーに刃向かい殺された。
イナリ君はそれがトラウマとなり、弱いくせに一生懸命なうずまき君が気に入らなかったらしい。
でもその話を聞いたうずまき君は逆にヤル気がみなぎりまた修行へと行ってしまった。
普通ならチャクラの使いすぎでまともに動けないハズなのに…
うずまき君の身体のなかはどうなってるんだ、とか思う。
結局朝になっても戻らなかったうずまき君。
今度はうちは君まで散歩、と言って帰ってこない。
仕方なく朝食を届けるついでに春野さんとはたけ先生と、様子を見に行くと、ずいぶんと成長したうずまき君がいた。
もう、春野さん位の高さまで登れていて、うちは君はうずまき君と自分の二人ぶんの体重まで支えられる程に。

あぁぁーわたしも修行しとけばよかった!!

なんだか二人に追い付かれたような気がして、その日の護衛ではいつも以上に張り切って修行した。
夕食の席ではボロボロで帰ってきた二人が木のてっぺんまで登れたと嬉しそうに報告していた。
うずまき君はまたイナリ君と喧嘩していたりとしていたけれども、翌朝には流石に疲れのせいか起きて来なかった。

今日からははたけ先生も復帰して、皆でタヅナさんの護衛だ。あの再不斬の襲撃からだいたい一週間。
今日からは本格的に警戒する必要がある。

「な、なんだぁ!?こりゃぁ!?」

やはり。
橋の上には作業に来た波の国の人達が倒れていた。

「はたけ先生!」

霧が辺りを覆う。

、結界だ!」

陣を組みながら素早く印を組んでタヅナさんを結界で囲む。
やはり、再不斬は生きていたのだ。

「待たせたな、カカシ。相変わらずそんなガキを連れて…」

霧の中から声がする。
霧隠れの術だ。

「また震えてるじゃねーか、可哀想に。」

その瞬間、再不斬の水分身がわたし達の回りを取り囲んだ。
その分身の一体が、うちは君の表情か、恐怖ではないことに気づく。

「武者震い、だよ」

「やれ、サスケ」

はたけ先生の合図でうちは君はあっという間に再不斬の水分身を破った。
殺気に怯えて動けないでいた一週間前とは大違いだ。

「ほう、水分身を破ったか。あのガキ、けっこう成長したな。ライバル出現だな、ハク」

「そうみたいですね」

霧の中から現れた再不斬本体と、仮面の少年。やはり、霧隠れの追い忍というのはウソだった。
彼も、再不斬の仲間。

はたけ先生がわたしにそっと耳打ちした。

、倒れている人達を保護できるか」

「…やってみます」

散らばって倒れている波の国の人達。
このまま放置していたら戦闘に巻き込まれて危険な上に人質にもされかねない。小さな結界を一度に何個も作るのは初めてだけどやるしかない。先生が仮面の少年を挑発している隙に印を組む。

「…五行繋界!」

小さな結界が倒れている人達を包み込んだ。
成功した…!!
再不斬はそれを見て舌打ちして「見たことねぇ結界だな…」と少年に呟いた。

そりゃそうだ。
わたし達一族は結界忍術のエキスパートだ。そしてその血継限界もそれに大きく関わるもの。
一族はチャクラを、変幻自在の性質に変えられるのだ。
変幻自在のチャクラを壁にして結界を張る。そして外からの攻撃の属性に合わせて性質変化を起こして攻撃を無効化する。
地味だけれども少ないチャクラで効率的に結界の強度を上げることが可能となる。更に応用もたくさんある。
今張った結界は、術者と結界のチャクラを繋いでいるので術者のチャクラが切れるまで攻撃を防ぎ続けられるもの。
つまり、わたしが結界の中に入ってしまえばわたしのチャクラが切れるまでは相手の攻撃は防げる絶対防御。

は結界の維持に集中しろ。何があっても結界の外には出るな!サクラ、お前は負傷者の手当てだ。」

わたしは頷くと春野さんを結界内を移動可能にするようにマーキングした。

うちは君は仮面の少年の相手、はたけ先生は再不斬だ。

まず、うちは君とハクと呼ばれている仮面の少年が動き出した。
ハクはとても早いスピードでうちは君に襲いかかる。
でもうちは君も遅れることなく、むしろ追い抜くほどのスピードで対応した。
はじめは有利に思えたうちは君。
でも、流れはハクの秘術で一変したのだ。

「秘術・魔鏡氷晶」

うちは君の周りを取り囲むように氷の鏡が現れ、その一枚にハクが入り込む。
はたけ先生が助けに行こうにも再不斬が邪魔をする。
そして、ハクの攻撃が始まった。





氷の鏡に写りこんだハクが千本のようになった氷でうちは君をあらゆる所から撃ち抜く。
回避は不可能…!
わたしは咄嗟に印を組んだ。

「五行結界・守護の陣!!」

うちは君の周りをガラスのような結界が囲む。しかし、その結界も何百回も攻撃を受けるとくだけ散る。
五行結界は五行繋界と違って、うずまき君の影分身のように、チャクラと術者は切り離されている。
つまり、最初に注ぎ込んだぶんのチャクラの攻撃しか防げない使い捨ての結界だ。
今のわたしなら、1のチャクラで相手の10のチャクラ分の攻撃なら防ぎきれるが、それ以上のダメージを喰らうと今のようにくだけ散る。
更に、一度チャクラを五行結界で切り離してしまったら、自分の意思で結界を解除してもそのぶんのチャクラは戻ってこない。

結界が消えてまたうちは君は氷の千本に襲われ、痛みのあまり絶叫していた。

「サスケ君!!、サスケ君を守ってよ!!」

春野さんがわたしに駆け寄るけれども、わたしはすぐには頷けなかった。

…うちは君を援護すべき!?
でも、チャクラを無駄に消費したら…

!サスケ君が死んじゃうじゃないっ!!」

春野さんが涙も浮かべながらわたしの胸ぐらを掴んだ。
うちは君はこうしている間にもどんどん氷に貫かれていく。

わたしが思わず、五行結界の印を組もうとした瞬間、結界がある程度のダメージで消えると気付いた再不斬がはたけ先生がうちは君に気をとられている隙に水分身を使ってタヅナさんとわたしを覆う結界を攻撃してきた。

それを見て、印を中断した。

こちらの結界は五行繋界だからいくら攻撃されてもわたしのチャクラがもつ限り平気だ。
でも、チャクラはその攻撃に比例して削られる。

やっぱり、これ以上の援護はマズイ…!!
ただでさえ30近くの結界を張っているのだ。
もし、はたけ先生と再不斬が前の、水遁・大瀑布の術のような術を多用しての戦いをはじめたら、最後までもたないかもしれない。

「はたけ先生!五行結界と違ってこっちの結界は大丈夫です!うちは君を!!」

先生は「タヅナさんは任せた!」と言ってうちは君の助けに入ろうとするけれどもすぐに再不斬に邪魔された。
春野さんはわたしの胸ぐらを掴んだまま、思いっきりわたしの頬を叩いた。

!!アンタ、仲間を何だと思ってるのよ…!!」

乾いた音が橋の上に響くけれども、うちは君の呻きですぐに消される。

「最初から、そうだったものね!!少し見直しちゃってた私がバカだったわ!!」

春野さんはそう言い捨てると結界から飛び出した。

「サスケ君!受け取って!!」

そしてそのままクナイをうちは君に渡そうと氷の鏡の隙間をぬうように投げる…けれども、それはうちは君ではなく鏡から出てきたハクに受け取られた。

外部からの補助も難しい…

春野さんが絶望の表情を浮かべたとき、鏡から出ているハクの仮面に手裏剣が飛び込み、その衝撃でハクは鏡の外に弾き出されたのだ。


そして、橋の上の煙から、もう聞きなれた声がした。


「うずまきナルト、只今見参!!」