はたけ先生から再不斬を庇うように立ったまま死んだ少年、ハク。
チャンスとばかりに彼の死をも利用する再不斬。それを返り討ちにする先生。
そんなわたし達の背後から突然現れたガトーと、大勢のギャング達。
ガトーは地に付すハクの亡骸を蹴り飛ばし、得意げに正規の忍を雇うには莫大な金がいるから抜け忍の再不斬を雇ったが、
更にもその金すら惜しみ忍同士相打ちになっていればよかったのに、と笑いながら自分の計画を明かした。
「カカシ、すまん。闘いはこれまでだ。」
再不斬は真っ直ぐとガトーを見つめたまま言った。
うずまき君はハクの亡骸を痛めつけられたことに激昂したけれども再不斬は冷静に見えた。
「おまえもなんとか言えよ!仲間だったんだろ!?」
「黙れ小僧。ハクはもう死んだんだ」
再不斬が俯いたまま言う。
「あいつは、あいつは、お前のことがほんとに好きだったんだぞ!!それなのになんにも思わねぇのか!?」
うずまき君は敵だった少年のことを必死に訴える。
「お前みたいに強くなったらそうなっちまうのかよ!?アイツは、お前のために命を捨てたんだぞ!?」
うずまき君は忍のくせに、号泣しながら最後に吐き捨てるように言った。
「道具として死ぬなんて、そんなの・・・つらすぎるってばよ」
「それ以上、何も言うな」
再不斬の様子がおかしく、彼を見ると足元には数滴の水。
「小僧、クナイを貸せ」
ナルトの投げたクナイを口で受け取った再不斬は圧巻だった。
ギャングの群れをクナイ一本で駆け抜け、ガトーを討ち、ハクのもとへと戻ろうとしたけれどもそのまま倒れ込んだ。
「目を背けるな。必死に生きた、男の最後だ。」
一方の春野さんとうちは君。
「ナルトー!!!サスケ君は無事よ!生きてるわ!!」
うちは君は視線だけこちらに寄越して微かに笑った。
わたしもそれに頷いた。
うちは君はわたしの結界に気付いていた。
最後は、うずまき君を庇ったのは確かに無意識だったかもしれないけれども、どこかでわたしを信じてくれていたからだと気付いた。
そしてあのお面の少年、ハク。彼も、おそらくわたしの存在に気づいて、わざとあれだけの殺気を出したのだろうか。
あくまでも推測に過ぎないけれども、なにかぞくぞくとした感覚が背中を走った。
そんなとき後ろから荒々しい声がした。
「おいおいおいおい、せっかくの金ヅツ殺してくれちゃってよぉ」
「こうなったら街を襲って、金目のもの全部持っていくしかねぇなぁ?」
荒れるギャング達の足元に突然一本の矢が突き刺さった。
矢の放たれた方を見るとそこにはギャングよりも大勢の、波の国の人たちがお鍋やクワなどをそれぞれ身にまとっていた。
「これ以上この島に近づくやからは全島民の勢力を持って、生かしちゃおかねぇ!!」
そして、彼らの先頭にはボウガンを構えたあの少年。
「イナリ!!」
「イナリ、お前たち・・・!!」
歓喜するナルトとタヅナさんにニッカリ笑って彼は得意げに言った。
「ヒーローってのは、おくれて登場するものだからね。」
そんな彼に背中を押されてうずまき君とはたけ先生も印を組んだ。
「よーし、俺も加勢するってばよ!」
「影分身の術!!」
島民、影分身、人数のあまりの差に逃げ出すギャング達。
波の国の人たちは手を取って喜び合った。
そんななか、再不斬に近づくはたけ先生。
「終わったみてぇだな。カカシ・・・」
再不斬は背中にたくさんの剣を刺されながらもまだ息をしていたようだ。
「頼みがある。アイツの顔がみてえんだ。」
ふわりと舞い落ちる雪。
はたけ先生はそっと再不斬をハクのとなりに降ろした。
「できるなら、おまえと同じところに行きてぇな・・・」
再不斬はそうポツリと言って目を閉じた。
うずまき君が言うにはハクは再不斬を守るため、強くあったらしい。
わたしは結界という血継限界を生まれ持っているのに、肝心の守るものが見つかっていない。
むしろわたしは結界忍術を守るための術ではなく、その性質故守られてしまう術のように思っていた。
皆の大切なものを守るために、結界術者は皆から守られる。
今回のように。
ぐるぐると思考から抜け出せないでいたらポン、と頭に軽い衝撃。
「それより医者を呼ぶぞ」
よくやったな、、サクラ。
―お前達がいなければ、この人達は助かっていなかった。
はたけ先生の視線の先にはわたし達が応急処置をした怪我人。
先生のその言葉でわたしは暗い思考の海から助け出されたような気になっていつの間にか目にたまっていた涙がポロリと零れた。
そして、あの不思議な感覚がすっとひいて、身体の感覚が戻ってくる。
チャクラの使いすぎで全身がダルくて、指一本動かすのさえ億劫で、わたしは涙を流したまま意識を手放した。
波の国の、希望の橋はかかった。