今日も今日とてカカシ先生は遅刻してやって来る。
もう何時間待っただろうか。
待ち時間に比例してナルトとサクラがやかましくなってくるのはもはや恒例行事。
サスケはイライラしながらひたすら待っていて、わたしは先生が遅刻するのを見込んで本を持ってきたり修行したりして時間を潰す。
そしてやっとカカシ先生がやって来たけれども今日は少しいつもと様子が違った。
先生はわたし達を中忍試験に推薦したと言うのだ。
正直草むしりや子守りには飽き飽きしてきていたからわたしやナルトはこの話に飛び付いた。サスケもなんだかんだ言って内心喜んでいるだろう。
とても急な話だったが、誓約書に署名して明日アカデミーの会場となる教室まで持ってこいとのこと。
その日はサスケは少し用事があると言ったからいつもの修行場には行かずにわたしは久しぶりに早くに家に帰って誓約書に署名してばあちゃんに報告してしごかれた。
ばあちゃんは「せいぜいがんばりゃええ」と珍しく応援してくれた。
翌日、わたし達第7班は先生もいないのできっちり時間通りに集まりアカデミーへと向かう。
指定された教室はアカデミーの301。
階段を登ると人だかりが見えた。
なんか賑わっているなぁーとか思ったのも束の間で見覚えのあるオカッパが人混みのなかから吹っ飛ばされた。
あれはリーさん?
リーさんは起き上がってまた人混みの中に消えるからわたし達もそこに近づく。
どうやら受付会場の扉を少年二人が通せんぼをしているようだった。
そしてその二人にリーさんが通してくれと頼んでいるのだけれども押し返されている。一見少年二人が受験生たちを邪魔して受付会場に入れないようにしているように見えるけれどもリーさんの動きにわたしは違和感を感じた。
この人はこんなに簡単にやられる人じゃないし、なにより…リーさんのチームメイトのあの日向ネジが余裕そうにその様子を眺めていることからこれは茶番だと気付いた。
そして教室のプレートが“幻術”だということにも気づいたとき、サスケがそのことについて指摘しようとしたわたしを止めるように腕を出して言った。
「べつに通してもらう必要はないな。幻術だろう?オレ達は“三階”へ行くんだ。」
「…気づいたか」
通せんぼをしていた少年が笑う。
サスケはそれを無視してサクラを見た。
「おまえは一番に気付いていただろう、サクラ?」
「え…?」
「おまえの頭脳と幻術の才能はオレ達の中だといちばんだからな!」
「…!!ええ。だってここは…二階だもの!!」
幻術を解くために解の印を組むとやはりプレートは301ではなく201であった。
通せんぼしていた少年たちは試験官だったようで変化の術を解いて中忍試験を受けるということにクギをさしていった。
案の定、リーさん達は芝居をしていたようで、なんだってそんな…と呆れるわたしに気付いていないのか猛烈にサクラにラブアタックをして撃沈するリーさん。それを半笑いで眺めていたわたしにやっと気づいたのか笑顔で「さん!アナタもこの試験受けるんですね!」と駆け寄ってくるけど、正直フラれたところをみてしまったから気まずいし周りの視線もイタイしで「あぁ、はい」と引き気味で笑う。
その後になんだかサクラを巡って…?サスケとリーさんは対決したけれども勝負がつく前にガイ先生がそれを止めた。
もうなんだかいちいち考えるのもめんどくさくなってきたけれどもとりあえずわたしはガイ先生に二人の争いをなぜ止めなかった!!と責められ、リーさんがいいえ!さんはボクの気持ちを汲んでくださったんです!!とかばい、そうかっ!!・・・青春だな!!とガイ先生が納得して「!!お前にも青春が理解できるようになったのだな!!」といつもの緑色全身タイツを押し付けた後にガイ先生達は白い歯を輝かせて去っていった。
…なんつーか、ほんと濃いな
普段は一緒に修行したりもするけど距離を置いてみたら思いのほかすごくてなんだか苦笑いをこぼしてしまった。
サスケはわたしを憐れんだ目で見て「知り合いかよ」と聞いてくるから「まぁ…よく一緒に修行したりしたかな…最近はあまり出くわしてなかったけど」と答えた。
サスケはおそらくリーさんを意識しているのだろう。
写輪眼をもってしてもどうしようもなかった“体術”
中忍試験に内心ワクワクしているはずだ。
とまあ、
…それはともかく、中忍試験はマンセルで受ける以上チームプレーが重要。
このチームで動くということ。
やっぱりわたしにはチームワークは向いていないのかもしれない。
さっきの幻術といい自分のことばかりでサクラの異変になんて全然気付いていなかった。
その点サスケは…
わたしは無意識にサスケを見上げていたようでその視線に気付いたサスケが訝しそうにわたしを見るからなんでもないと視線をそらした。
ナルトじゃないけど、やっぱりサスケには負けたくない。
そう改めて決意をしてから本物の会場に入ると柄の悪そうな同じ受験生達の鋭い眼光に出迎えられた。
と、そんな殺気だった中に見慣れた顔をいくつか見つけた。
10班、8班の同期達だ。
わたし達の同期は7、8、10班のわたしにナルトにサスケ、サクラ、キバ、シノ、ヒナタ、シカマル、いの、チョウジの十人。
早速サスケを巡ってサクラといのが争いそこにナルトが突入してわいわいと和やか…否、騒がしくなる。
そんな中自然とわたしは交流のある第8班の方へ行った。
「お、。」
「…おまえそういえば七班だったな」
シノが思い出したように言うから苦笑する。
まぁ、確かにキバ達に会うときは1人だけど…アカデミーでもヒナタ以外とはあまり話してなかったから想像つかないのかな。
そう思っとこう。
「まぁね。中忍試験なのにチーム受験とは思わなかったや」
キバは笑って「、おまえツイてねぇな。ナルトと一緒だなんてよ」なんて言う。赤丸もまるで同意するかのようにワン!と鳴いた。
確かにナルトはアカデミーでは断トツのドベ。そのくせ目立ちたがりで授業妨害ばかりしていた。
以前のわたしならホントたまんないよと頷いただろう。
でも今は…
わたしは「そんなこともないよ」と否定した。
八班の面々はわたしの返事が意外だったらしく驚いていた。
そんな面々に苦笑いを返してふとヒナタを見る。
―そう思えばずっと前からナルトの、派手な行動で隠しているところに気付いていたヒナタは凄いのかもしれない、
なんて見つめられて照れているヒナタに和んでいたら、木の葉の額宛をつけたおそらく先輩がやって来た。
どうやら遠足とでも勘違いしてるかのように騒がしい後輩達に忠告をしに来てくださったようだ。
薬師カブトと名乗ったその先輩は試験の難易度やら他の里の忍についてご丁寧に教えてくださっていると思ったらナルトがわたしの横をすり抜けて教卓に飛び乗ると教室にいる受験生たちに向って怒鳴ったのだ。
「オレの名前はうずまきナルト!!おまえらにはぜってー負けねぇ!ぶっとばしてやるってばよ!わかったか!?」
シンとした後に怒号が飛び交う。
何がおこったのか、理解したくないからかまだ茫然としていたわたしの肩をポンポンとキバが慰めるように叩いて言った。
「……、ムリ、すんなよ…」
シノもナルトの行動にドン引きして何度も頷く。
「…うん…ちょっと前言撤回したくなったかも」
なんてね、と呆れてわたしはため息をついたのだった。