そんなこんなで始まった一次試験。
試験内容は激ムズなペーパーテスト…!!
しかもこれ、チーム全員の得点で合否を決めるらしくあの超問題児、うずまきナルトを抱える我等が第7班はとてつもなくピンチであった。
まぁその代わりというかテスト関連での頭はおそらく同期で一番良いサクラがいるから海野先生が最初に言ってたバランスを考えて班を組んだというのはあながち間違っていなかったのだなとか思いつつ、わたしは座席を決めるためのクジをひいた。
その後もつらつらと試験のシステムを説明する試験官、森野イビキの話から(カンニングは5回したらアウト)この試験の本来の目的は頭の良さではなく、情報収集能力を問うものとはわかったけれども、わたし、カンニングする手段が無い…
しかも座席は一番前の真ん中。カンニングしようがない…左右はなんだか冴えない受験生が座っているし。
仕方ない、自力で解こう。
試験開始の合図があり皆がバッと問題用紙をひっくり返す。
わたしもそれに倣って必死に過去の試験を思い出しながら問題を見た。
…・・・なんだ、これ
試験問題は見たことのないものばかりであった。
必死に読むけれども、わからない。
え、え、マジでヤバイ。
ちょっともうなんとかカンニングするしかないんじゃないか、
、と悶々しながら悩んでしばらくたったとき、背後でクナイの刺さる音がした。
「失格だ」
カンニングがばれたのだ。
やっぱり下手にカンニングしてアウトをくらうわけにもいかない。
どうしようかと途方に暮れて天をあおぐと、電灯にチカっと光る欠片を見つけた。
…あれは、鏡の破片?
そこからは糸が伸びていて、糸を持っている受験生がたまにくいくいと引っ張りそれに合わせて鏡の角度が変わっている。
…これは、ラッキーだ!
とりあえずそれをチラチラと盗み見て上手い具合に見えた答えを書いていく。
流石に全部は見られなかったけれども、十問中六問は写せたからなんとかなるハズだ。あとは持ち点を減らさないよう余計なことはせず、ナルトがやらかさないことを願っておこう。
そう考えてから最後の問題をもう一度確認する。最後の、10問目のみ問題は書かれていなかった。
内容は試験がはじまってから45分たってから試験官が発表するとのこと。
つまりそれまでができることはテストに関しては特にない。
印を組む練習をしようにもなんか怪しまれてカンニングしてるとか思われても嫌だし、落書きしても消して跡が残って採点の時にバレそう、と悩んでいるうちになんだかうとうととしていて気がついたら結構な時間が過ぎていた。
ヤバイ、と思ったけれどもタイミングは良かったようで丁度最後の問題を発表しようと試験官の森野イビキが立ち上がったところであった。
「まずこの試験を始める前に、一つルールを追加する。まず、この10問目をお前達は受けるか、受けないか選択しろ。」
皆が戸惑う中試験官は冷静に続ける。
「もしこの10問目を受けないならば自動的にお前達の点数は0点となり失格だ。もちろん、他の班員もな。そしてもし受けることを選択してこの問いを解けなかった者は今後中忍試験を受ける資格を失う!」
あまりのことにキバが大声で抗議した。
「そんなふざけたルールあるかよ!!ここには何回も中忍試験を受けてる奴らがいるだろ!!」
そうだ。中忍試験に落ちても例年は次の試験は受けることが可能なのだ。現に先程知り合ったカブトさんも何度もこの試験を受けている。
だが森野イビキはそれを聞いて笑うだけだった。
「運が悪かったな。今年は俺がルールだ。10問目、受けるか受けないか、考えろ。受けない奴は手を挙げろ。」
会場はシン、と静まり返った。
この試験の難易度、そして受けることによるリスク。
一人が手を挙げ離脱してから、このリスクに耐えきれずにパラパラと手を挙げるものが増えた。
離脱するものは班員全員この教室を出て行く。
わたしはその背中を一番前の席から見送っていたけれども自分は手を挙げる気はさらさら無かった。
正直中忍になれなかったらばあちゃんは煩いだろうけど、わたしには他のみんなみたいに立派な夢やら目標は無いからこのリスクはそれ程大きな物でもなかったということが一つ。
そして二つ目の理由は、
―サスケが手を挙げないなら挙げない。
そんなくだらない意地では手は上げずに静かに周りの様子を伺った。
とは言っても一番前のど真ん中の席のは振り向かないと皆の様子などわからなかったので試験官が、挙手したものの班員達を呼びあげる声に耳を澄まし、自分の知っている名前が呼ばれぬかだけに気を張った。
ナルトは、どうするのだろうか。
わたしよりも確実に頭が悪く、わたしよりも遥かに中忍になりたいと思っているだろう彼は、今回の選択、どうするのだろうか。
そんなとき、バシィンという音とともに聞きなれたどなり声。
「見くびるなってばよ!!俺はぜってー逃げねぇ!!!」
驚いて思わずわたしが振り返ると案の定そこにはナルトがいた。
「受けてやるってばよ!もしそれで一生下忍のままでも俺はぜってー火影になる!!俺は怖くねぇってばよ!!」
シンとまた静まり返る。
「もう一度聞くぞ。受けるのか?これが最後のチャンスだ。」
「一度言った言葉はぜってー曲げねぇ!それが俺の忍道だ!!」
森野試験官は周りを見渡して、もう挙手する者はいない、と確信して頷いた。
「わかった。・・・では、ここに残った者79名全員…一次試験合格だ!!」
ポカンとする中一番に立ち直ったサクラが驚きながら尋ねる。
「どういうこと?合格?10問目は?」
「ここに残るかどうか、それが十問目だ。」
その後も戸惑う受験生達に森野試験官がこの試験の種明かしと情報の大切さを身をもって教えてくれた。
でも相変わらずわたしは背後のナルトを見ていた。
なんだか、すごいな。
馬鹿だけど、ナルトはいつも一直線で自分に素直だ。
わたしは、馬鹿ではないけど自分に嘘をつくことが多々ある。
…やめよう、いつもこうやって卑屈になってしまうのだから。
そう考えうつむいていた頭をあげた瞬間、物凄い速さで何かが窓ガラスを突き破って突っ込んできた。
驚いて机の下に避難していたわたしは隣に座っていた受験生がぎゃあぁ、と叫びながら飛んできたガラス片の突き刺さった腕を抑えているのを見て避難して良かったと安堵する。
その物凄い速さで突っ込んできたものの正体は二次試験の試験官だったようで、なんだか次の試験もえらいめに合いそうだな、とわたしはそっとため息をついた。