気がつくと空には星が輝いていた。
あの男の姿は無く、わたしは大木の枝に横たわっていた。
怪我はあるが、致命傷ではない。
チャクラは少しではあるが回復している。
はやく、合流しないと
この森のなかサクラ1人でサスケとナルトを守るのは厳しい。
それに、二人の怪我の具合も心配だ。
みんなは、無事…?
わたし、ちゃんと時間、稼げたのかなぁ?
ふらふらする身体をなんとか引きずり、なけなしのチャクラを振り絞り足へと集めて駆け出した。
ようやく三人を見つけると、今度は彼等はかなりの人数に囲まれていた。
気配を消して様子を伺うと、彼等を囲っている者はほとんどが同期の木の葉のルーキーで、ヒナタ達八班以外全員いる。また、ひとつ上の先輩のリーさんの班までいた。更に負傷者も何人か見える。
…どういうこと?
「みんなっ!」
「!?そういえば、どこ行ってたんだってばよ!?」
わたしが奈良君と秋道君に囲まれていたナルトの前に躍り出たけど、ナルトはなんだか拍子抜けすることを言った。
「え、なに?戦闘じゃなかったの?これ、ただの集会?」
わたしがわけが解らずにいると最後に見たときよりも髪が短くなったサクラが駆け寄ってきた。
「!無事だったのね!」
そのまま抱きつかれて傷が開いたのか激痛が走り思わず呻いたけれども、サクラが泣いているのに気がついておとなしくした。
「サクラも、無事で良かった…それより、これは?」
サクラがまだえぐえぐしていると、山中さんが事情を教えてくれた。
わたしが居ない間に音の忍がサクラや負傷して眠っていた二人を襲っていたところを、皆さん総出で助けてくれたらしい。
「…そうだったんですか…皆さんほんとうに…ありがとうございます」
わたしが改まって頭を下げると奈良君は居心地が悪そうに「俺らが勝手にやっただけだ」と頭をかいた。
リーさんはなんだか凄い怪我をしていたけれども、「名誉の負傷です!…それに、まだまだ修行が足りないと知る良い機会でした!」と白い歯を見せて笑うだけで、チームメイトの二人も呆れたようにしているだけだったから少し安心した。
そして、ふと顔を上げるとサスケと目が合った。
「……」
相変わらず機嫌が悪そうな顔をしている。
そんなサスケに少し呆れたけれど、
「…大勢の敵の騒ぎは 忍よし 静かな方に隠れ家もなし 忍には 時を知ることこそ 大事なれ… 敵のつかれと 油断するとき。ちゃんと覚えてたでしょ?」
「そーかよ」
相変わらずの様子に少し安心したのも事実。
皆とお別れをして、もとの第7班の四人に戻った。
巻物はあの蛇のような男に奪われ無い、と思ったら音の忍から一本奪ったようで、これで振り出しに戻った。
わたしはそこでやっと全身の力が抜けた。否抜けざるをえなかった。
「!?」
サクラが駆け寄るのに力なく笑う。
「チャクラを使いすぎちゃった…はは、しばらく立てそうにない、かも…」
情けないと思って他のメンバーがいる間は最後の力を振り絞って耐えていたが、もうチャクラも体力も気力もすっからかんだ。
とにかく派手に暴れた今の場所に居続けることもできないので、わたしは怪我をしているサクラ以外の肩を借りてなんとか身を休められる場所まで運んでもらった。
そこからはとにかく最初の目標であった食料、水の調達を主に行った。
もちろん、チャクラの使いすぎでわたしは寝たきり状態であったから、1人木の虚で寝かされて、他のメンバーがその他諸々をしてくれている。
申し訳なかったけれども仕方がないしチャクラが回復するまでひたすら眠り、ひたすらイメージトレーニングを続けた。
そうして過ごしていたわたしは狭い虚の中でなんとか寝返りをうつと、地面に置いた小石が目に入った。
小石の数はもう四つ。
五日間のこの試験の四日目を示す。
あれからわたし達は他の受験生にすら会えず、ただただサバイバル生活を送るだけだった。
わたしは再び眠ろうとした身体を起き上がらせた。
チャクラ切れによる疲労はだいぶんマシになった。
もうある程度はうごける。
虚から出て身体を伸ばすと狭い場所でずっと寝ていたせいかパキパキと関節が鳴った。
サクラが置いていってくれた水を飲んでいると、気配が一つ。
「もう大丈夫なのか?」
「うん。お陰さまで。」
聞きなれた声に緊張を解いて振り返るとサスケが焼き魚をずい、と差し出した。
「食え。」
「ありがとね。」
それを受け取り食べながらサスケと並んで歩く。
わたしが虚で休んでいた間、皆は川辺を中心に活動していた。途中サスケに一声かけて、水浴びを(とても嫌がられたが)二、三分させてもらってまた皆のところへ向かおうとすると、気配が一つ増えていた。
「」
「うん」
クナイを構えナルトとサクラの方へ飛び出すと、そこに居たのは一次試験が始まる前にお世話になった木の葉の先輩、薬師カブトさんだった。