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「へへへ・・・罠にかかったネズミだな」

大勢の敵の中の一人が、そう挑発した。

「うるせぇぇ!!」

ナルトがそいつを殴りとばす。

「やったわ!ナルト!!」

だが、男はまるで単細胞生物が分裂するかのように、ナルトに殴られた腹から二つに分かれた。
幻術だろうか。
正直わたしにはまともにやりあう体力は残っていなかったので、敵の攻撃に備えるだけにすることにした。
サスケが写輪眼を使い、敵の攻撃を見極めようとしたけれども、なんだかサスケの様子がおかしい。肩の辺りを気にしているように見える。
そういえばあそこはあの蛇男に噛まれていたところだ。
何か、されたのだろうか。
だが、今はそれどころでもなく、わたしは飛んでくる手裏剣を必死に避ける。
サスケもなんだかんだで写輪眼を使い、敵が幻術を使っていると見抜いたが、カブトさんにダメージを与えたクナイは本物だった。
おそらく幻術と本物の手裏剣を上手く組み合わせているのだろう。なかなかにやっかいだ。
反撃しようにも敵が多すぎる。
そんな中、ナルトが影分身で一気に数で対抗しようとした。
カブトさんが、攻撃は無駄だと説得するけれども、ナルトは幻がいなくなれば、あいつらも見つかるから攻撃できない!と言い張り、影分身を大量に生みだした。

「いくぞぉぉぉおお!!」

ナルトの分身達が次々と敵を倒すけれども、幻術相手ではキリがない。
そんなときにナルトのある「作戦」が実行された。
だが、敵は気付かない。
そのままナルトの分身達は戦い、ついに本体を残して消えてしまった。

「ここまでか・・・」

カブトさんも、サクラも、サスケも、そしてわたしももう残された体力は多くなかった。
地に膝をつき、息を荒げる“わたし達”の前に、ついに敵の本体が姿を現した。
現われた忍は、この森に入って最初に、ナルトになりすまして、逆にわたし達にやり返された霧隠れの忍だった。

「ついにお前に借りが返せる・・・ラッキー」

そう言ってクナイを構える男。
しかし、次の瞬間には形成が逆転した。

「罠にかかったネズミだな。」

「完璧よ!ナルト!!」

「ナルトにしては良くやったね。」

男たちの背中側から、ナルトを除いたわたし達、四人が敵を挟みうちにする形で出ていったのだ。
戸惑う男たちにナルトが得意げに笑って変化の術を解いた。

「バーカ!!ようやく尻尾を出したってばよ!」

ナルトは、影分身に変化の術をかけてわたし達になり済ましていたのだ。そしてそれをオトリにわたし達は離れた茂みに身を潜めていた。
サクラがホント、あんな中よく思いついたわね、と褒めるとナルトは嬉しそうに笑いながらわたしを見た。

「へへへっ・・・ホントはが波の国でおっさん助ける時に、水分身に変化の術をかけてたのを思い出したんだってばよ!」

わたしもナルトに笑い返して「良い応用だったね。」と茶化した。
しかし次の瞬間、ナルトは足の力が抜けたように地面に座り込んだ。
おそらく、チャクラ切れ。
つい最近そうなったわたしはこのキツイさは良くわかる。

「ナルト、お前はチャクラの使い過ぎだ。後は任せろ。」

そうサスケが珍しく気遣って敵に止めをさそうとしたが、その敵は反対側から吹っ飛ばされた。

ナルトだ。

「おいしいところばっか持っていかれてたまるかよっ!!」

信じられない。普通ならすぐには動けない。
わたしだって、気を失って、更に無茶してまともに動くのに四日かかったのに・・・
ナルトはいったいどうなっているのだ、と驚きを隠せずナルトを凝視した。
ナルトは敵がまた幻術を使って数を増やすけれども、ナルトは制止を振り切り一人突っ込んでいく。
そう簡単に本体がわかるわけがない。
そう思ってわたしが印を組もうとするとサスケに止められた。
「俺がやる」
サスケの目に勾玉模様が浮き上がる。
しかし、すぐにサスケは凄い声で呻き、肩を押さえてうずくまった。

「サスケ!」

慌てて崩れるサスケを支える。
サスケの肩にはなんだか変なアザが浮かび上がっていた。

「サスケ・・・?」

サスケはわたしの見ているところに気づくと、隠すようにそこを手で押さえた。
そして、そのサスケのうめき声で隙のできてしまったナルトを庇い、カブトさんが負傷する。
更に逆上するナルトを止めたのはサスケだった。
「どれだけ幻に攻撃しても、お前は絶対に本体を見つけ出せない。そこに本物はいない!」
「じゃぁ、敵はどこから攻撃してきてるんだってばよ!幻術は攻撃できないだろ!」
まだ納得いかない様子のナルトにわたしも声をかける。
「普通はね。でも隠れて幻術の動きに合わせて攻撃はできる。ナルト、一度落ち着いて!このままじゃどうにもならない。」
ナルトはしぶしぶ、いや、限界がきたのか座り込む。
本当にまずい。
早く敵の本当の位置を掴まないと体力切れだ。
わたしは五行捜界の印を組んだ。
陣が出来上がり、その陣の中のモノの動きが全て伝わってくる・・・
そして、この隙を狙ったカブトさんへの攻撃を察知して、わたしは五行結界を張った。
しかし、敵は何故か、結界には気付いていないのにカブトさんに切りかかる前に攻撃をやめた。
小さな違和感。
でもこれで敵は地中から全員地上へ現れた。
そこをナルトが見事、しとめて見せた。

「ふぅ。ありがとうナルト君、さん。助かったよ。」

カブトさんはそう笑う。
彼は、わたしの結界に気づいていたのか。
さっき張った五行結界は印無しだし、マイナーな血継限界なので一見して気づくのも、気づいてもそれが何なのかなんて滅多にわかる人なんていなかったのに。
わたしは曖昧に笑った。
その後、敵はちょうどわたし達の求めていた巻物を持っていて、二本の巻物を揃えたわたし達は無事にゴールの塔へとたどりついた。
カブトさんはそこで仲間の二人と合流して別れた。

、どう思う?」

サスケがカブトさんの背中を見送るナルトとサクラの後ろで小声で呼びかけてきた。
言いたいことはわかる。
カブトさんの違和感だろう。

「わたしも、気になるかな。でも、何がひっかかるのかがわからない」

サスケは頷いた後、気を取り直すように未だに手を振っている二人に「行くぞ」と声をかけ、塔へと向かった。

塔で指示され巻物を開くと、アカデミーの海野先生が現われてわたし達の合格を告げてくれた。
二次試験は、蛇男だとかカブトさんだとかいろいろひっかかることが多かったけれども、無事に合格!