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ずっと、思っていたことだった。

わたしはずっと、影に居るんじゃないかなって。

アカデミーに通うまでは、わからなかったけれども、アカデミーに入ってからずっと思っていた。
どんなに頑張って、どんなに実力をつけても、わたしを見てくれる人はごくわずかだった。
わたしの輝きは、影の闇に紛れて光を強くは放てずに、日の当るところで輝く、その日より眩しいサスケや、ナルト達の光に紛れて見えない。
影でどんなに輝こうともがいても、日向に出ることはできないでいた。

そんな中、わたしを見つけてくれたヒナタ。
影の中でわたしの光を一番に見つけてくれたのは、彼女だった。
たとえ、ヒナタがナルトのことを好きでも、ナルトばかりに目をやっても、決してわたしを忘れずに、見ていてくれる大切な人。


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予選は進み、ナルトがキバに勝利を収めた試合の次の試合が発表された。ヒナタと、ヒナタの従兄の日向ネジ。
わたしは、アカデミー時代からヒナタとは仲良くしていたからネジのことはそれなりに知っていた。
木の葉の名家、日向の天才。
そして、ヒナタに強い敵意を抱いている。
わたしは何度かネジがヒナタにキツく言う場面に出くわし、その度にヒナタを庇っていたからネジとは良好な関係ではない。
それは、ヒナタが八班に所属してからは、キバやシノも一緒であったが。
この場でネジが何かしでかさないか不安でネジを睨みつけるが、ネジはわたしの視線なんか気にせずヒナタを睨みつけるだけであった。

試合ははじまり、最初はネジはヒナタに棄権するように、彼女を傷つける言い方でそそのかしたが、ナルトの声援により、ヒナタは自ら戦うことを決めた。
天才と呼ばれるネジに必死で食らいつくヒナタは、いつものどこか諦めたふうな様子とは違って、諦めない、彼女の憧れたナルトのように輝いていた。
それでも実力の差は埋まらなかった。
途中、ヒナタの柔拳が決まったように思えたが、それはネジの天才たる所業、点穴を突いてチャクラの流れを止めるということによって無駄なものへとされていた。
それでも諦めずにヒナタは立ち上がる。
ネジは流石にその様子にたじろいだ。
日向ネジは、ヒナタを恨んでいたけれども、そのぶん他の人よりもずっとヒナタを見てきた人だった。
そんなネジだからこそ、ヒナタのいつもと違うこの試合での様子に驚きを隠せないのだ。
わたしは、ヒナタがこういった一面を内に秘めていたことには気づいていた。
でも、それを引き出したのナルトだ。
わたしはナルトに感謝するのと同時に少し嫉妬する。
わたしはただこの試合を黙って見ていることしかできなかったから。
ネジとヒナタの実力の差を冷静に判断して、またヒナタもその差をちゃんと理解していることを知っていたから、ヒナタに頑張れなんて言えなかった。
でも、ナルトはそんなこと気にもせずに、無責任とも思えるようなことを平気で言って、ヒナタを逆に勇気づけたのだ。
ネジは戸惑いを隠しきれない様子でまたヒナタに問う。

「何故立つのです・・・これ以上やれば死ぬのですよ」

「まだ、終わりじゃない・・・」

「何を。貴方は立つので精一杯のはずだ!貴方はいつも己の弱さを嫌っていた・・・だが、人は変わらない。それは、運命だ。もう、諦めろ!」

「いいえ、ちがうわ。ネジ兄さん・・・だって、私にはわかるもの。日向の運命に苦しんでいるのは、貴方の方よ。ネジ兄さん。」

すると急にネジの周りの空気が変わった。
わたしはネジの殺気に気づき、ヒナタの前に躍り出る。
先生達も一緒だったようで、日向ネジをガイ先生、紅先生、カカシ先生が止めていた。
わたしはヒナタに振り返って、「ヒナタっごめん。でも、もう・・・」と声をかけたら突然彼女は吐血して蹲った。
「ヒナタ!!」
崩れ落ちるヒナタを支えてゆっくり寝かす。
すぐに紅先生がヒナタに駆け寄り容態を確認し、ネジを睨みつけるが、ネジは不敵に笑って挑発するようなことを言うだけだった。

「何をしている!?医療班、早く!」

紅先生に怒鳴られ、
呆然としていた医療班の人達が我に返って担架を持ってやってきた。

「わたしもっ!わたしも一緒にっ!」

ヒナタを担架に乗せて運ぼうとする医療班の人達に、わたしはついていこうとするけれども、医療班の人に「邪魔だ!」と怒鳴られて立ちすくむ。

「結局あの人が一番宗家として縛られて、守られているということだ。」

その様子と、止めに入った先生達を見回して、吐き捨てるようにそう言ったネジに思わずわたしはつかみかかった。

「あなたがっ・・・あなたが一番わかってるでしょ!?ヒナタがどんな思いで今までいたのかっ…!!」

!」

カカシ先生に無理やり引き離されるけれども、それでもネジを睨み続けた。
ネジはふん、と嘲笑い背を向けようとしたが、「ネジ!」とナルトが声を荒げたことによりまた振り返った。



ナルトが、床についたヒナタの血を拳で拭い、ネジに突き出す。

「ぜってーお前は俺が倒すってばよ!!」

ネジはそんなナルトを鼻で笑うとギャラリーへと戻っていった。
わたしはただそれを呆然と見ているだけだった。
試合会場で立ち竦むわたしはカカシ先生に促されて観覧席へと戻された。
ゆっくりと歩きながら、所詮わたしは日蔭者だと投げやりに思った。
最初は違ったけれども、今ではもうナルトやサスケ、サクラにカカシ先生は大切な仲間だ。
でも、仲良くなるにつれて、近づくほど住む世界が違うような、どんなに頑張っても越えられない壁のようなものを感じる。
つまらない嫉妬といえば簡単だけれども、心にしこりとして残るソレは大切なヒナタのピンチでもつきんと痛んだ。




わたしは、




わたしは何をしてるんだろう





子供染みた考えを払い、ヒナタを心配しながらも、わたしは次に本戦で戦うかもしれない人たちの試合へと意識を移した。







本戦は、一ヶ月後。